《この物語はフィクションです》
今日もコンビニに晩御飯を買いにいく。
一人暮らしは楽だけど、せめて料理はできるようになりたい。そんなことを思いながら、いつも通り同じ道を歩いて帰っていく。
昔はさっさと家に帰っていたのだが、最近は疲れ気味で息が上がる。
そのまま帰り道を行くと、アパートの近くに大きな公園があるのだが、そこに決まってある人がベンチに腰をかけている。
25〜6歳くらいだろうか?毎朝、毎晩あのベンチで何かを考えているようだ。
見た目は若いのに、スーツを着ているわけでもなく仕事をしているのか前から気になっていた。そのくせ服はきちっとしたものを着ているし清楚だ。
なんでかわからない、でも今日はあの男に話しかけたくなった。きっと一人暮らしの寂しさから話し相手はだれでも良かったんだろう。
「すみません。」
男は黙ってこちらを振り向く。
「ちょっと横にすわっていいですか?」
「構いませんよ。このベンチはみんなのものですからね。」
あっさりオッケーされた。嫌な顔をされると思っていたのに、、、。さっきまで何ともなかったが、いざ横に座るとなんか気まずい感じになってしまう。
「は〜、つかれた。」
話す話題もなくて独り言を言ってしまった。まあいいだろう。コンビニで買ってきたビールでも飲もうかなとビニール袋に手をいれようとした時、
「きみ、最近疲れがたまってるんじゃない?」
急に男が話しかけてきた。
「たしかにそうですけど、、、」
なんで分かったんだ?そんなに顔は疲れている感じじゃないはずなのに、、、
「どうしてわかったんですか?」
「きみ、最近運動してないでしょ。1年前はよくこの周りを走っていたよね。」
どうやら前から僕を知っていたようだ。確かに前までは毎日走っていた。高校は野球部だったからそのときの習慣が残っていたのだ。でも最近はなかなか走れていない。
「はい、走っていましたが、それがどう関係あるんですか?」
「それが疲れの原因だよ。」
「えっ!?運動をしないから、ですか?ぼく、寝不足なんだと思ってたくさん寝るようにしているんですけど、、、」
「それはおそらく何の解決にもなっていないよね。」
男の言うことには妙に納得してしまった。初めて話したのにそんな気がしない。
「疲れには2種類あるのを知っているかい?」
「2種類?」
「そう、正しくいうと『疲労』と『疲労感』、この2つだ。疲労は文字通り疲れているからしっかり休まないといけない。」
男はこちらの様子を確認しながら話をすすめる。
「そして疲労感というのは、疲労の偽物と考えていい。本物の疲労じゃないってことだよ。」
「偽の疲労?どういうことですか?」
「疲労ってのは、体を使い切った、頭を使い切った、そんなときに起こるものだよね?でもきみの場合、そんなに運動をしているわけでもないし、大学でもそんな受験のときみたいに頭を使っているわけではないんじゃないかな?」
「そうですね、言われてみれば高校のときより頭も体も使っていないと思います。でも、眠たくなるんです。だから寝たほうがいいかなと、、、」
「運動をしていないと、体の血流が悪くなる。そうすると体の隅々まで酸素が行き渡らなくなる。結果、酸素不足で眠たいと感じるんだよ。」
自分が疲れやすいのは年をとったせいだと思っていた。実際、先輩も20歳を過ぎたあたりからしんどくなったと言っていたし。でもどうやらそれは違うってことか。でもこの人を信じていいのか、、、
「怖いのは、そのとき自分が眠たいと感じてしまって休んでしまうときなんだ。確かに眠たいのは事実だけど、その理由が運動不足なら対処の仕方は変わるよね。もしそこで寝てしまったら運動不足は変わりないから治らないんだよ。」
「確かにそうかもしれません。最近全然運動していないし、体が硬くなった気がするんです。」
「うん。運動でなくてもストレッチだけでもだいぶと効果がある。走るのに抵抗ある人はそれから始めてもいいんだけどね。」
こいつの言っていることは筋が通っている。だからおそらく本当のことだろう。けど、なんでわざわざアドバイスをくれたんだ?それにこいつは一体何者なんだ?
ここは直接聞くしかない。
「あの、、、」
「おっと、もうこんな時間だ、行かないといけないところがあるから、じゃあね!」
そういってその男はささっと公園を離れていった。くそっ、結局あいつの正体はわからずじまいじゃないか。せっかくのチャンスを逃してしまった。
まあ、毎日ベンチにいるんだし、機会はいくらでもあるか。よし、まだ時間あるし運動しよ!
案外、素直なおれは男の言う通り運動をこれからもすることを決めた。
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