あるところにライオンがいた。
そのライオン(ポンタ)は毎日毎日狩りをして生き延びていた。
シマウマを見つけては、ガブリ。
牛を見つけては、ガブリ。
同じ日々の繰り返しだった。
でも、なかなかうまく獲物を捕まえることができない。
多くは仲間のおこぼれだった。
ポンタの心の中で次第に劣等感が植えつけられていった、、、
そんなある日、ふと空を見上げると一羽の小鳥が空を飛んでいた。
ポンタ:「はあ、あんな風に早く空を飛べたら楽なのにな。」
ライオンA:「何を言ってんだよ、狩りもろくにできないくせに飛べるわけないだろ。」
ポンタはどうしても空を飛びたい。
それが自分の劣等感をなくせる唯一の手段だと信じていた。
みんなから認められたい、すごいって言われたい、ただその思いで。
次の日の朝。
ポンタは小鳥のさえずりで目が覚めた。
木の上で元気よく鳴いている鳥がいた。
ポンタは思い切って聞いてみることにした。
ポンタ:「ねえねえ、どうしたら君みたいに空を飛べるの?」
小鳥:「うーん、翼をビシッとしてバサバサって動かしたらいけるよ!」
ポンタ:「僕にもできるかな〜?」
小鳥:「小鳥の中で一番遅い僕でもできたんだよ、君にもできるよ。なんだって君は百獣の王さまなんだから。」
ポンタはその言葉に元気をもらった。
頑張ったら俺だってできるんだ!
それからというもの、毎日毎日ポンタは飛ぶ練習をした。
ちょっと高い岩からジャンプしてみたり
勢いをつけて飛んだり、、
でもなかなか飛べなかった。
しばらくしてまた二匹は出会った。
あの朝に出会った時と同じ木の下で。
ポンタ:「なあなあ、オレずっと練習してるのに全然上手くならない、、、」
小鳥:「心配しなくていいよ、僕だって初めは全く飛べなかったんだからさ。」
ポンタ:「んーそうか〜」
小鳥:「ねえねえ。」
ポンタ:「ん?どうしたの?」
小鳥:「僕さ、この前鳥の中で一番遅いって言ったでしょ?」
ポンタ:「うん、言ってたね。」
小鳥:「僕ね、君みたいに速く走れたらなーっていつも思ってたんだ。」
ポンタ:「え、僕みたいに?」
小鳥:「うん、そうだよ。だって君速いしさ、かっこいいしさ、、それに比べて僕は、、、」
ポンタ:「何言ってんだよ、君の方が速いじゃん!空も飛べるし!!」
小鳥:「でも、空を飛ぶくらいみんなできるよ。でも僕は君みたいに速く地べたを走れない、、、」
二匹はそれぞれ今までの過去を話した。
ポンタは走るのが遅くてみんなからいじめられていたこと。
小鳥は速く飛べなくてみんなから置いてけぼりにされたこと。
その他、これまでの苦労をとことん言い合った。
二匹とも自分の話のように聞き入った。
ポンタ:「そうか、そんな辛いことがあったんだね。」
小鳥:「君こそ、ライオンって何も悩みなんかないと思ってたよ。」
すっかり打ち解けた二匹はまた会う約束をした。
ポンタ:「次に会うときは、僕は飛べるように、小鳥君は走れるようになろうぜ!」
小鳥:「うん、僕めちゃくちゃ練習するからな!」
そうして二匹は別れた。
張り切っていたポンタは高い山へと登った。
ポンタ:「よーし、今日も練習するぞ!今度こそ飛んでやる!!」
そう言って高い岩陰からジャンプをした。
ポンタ:「よし、ここら辺からつばさを広げて、いまだ!!」
でも、つばさを持っていないポンタが飛ぶことはなかった。
そのままポンタは真っ逆さまに崖の下まで落ちていった。
一方、小鳥も走る練習をした。
小鳥:「よしゃ、走って足の筋肉をつけるぞーっ!」
しかし走る力のない小鳥は簡単にハイエナに追いつかれて、食べられてしまった。
二匹が会うことは二度となかった。
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