(記事はストーリー展開されていますが、途中から読んでも大丈夫なようになってます。)
《あらすじ》
大学2回生の井上は、何もない日常を過ごしている時にある一人の男に出会う。
男の名は竹本智史。
毎日話していくたびに彼の話に魅了されていく井上はある日、竹本が行っているプログラム(英語力と教える技術のスキルを身につける)に入らないかと誘われる。
英語と人を育てることに関心があった井上はその誘いを受け、新たな一歩を踏み出すことになった。
今日はセミナーは休みだった。
近くのカフェにでも行こうかと思っていたら竹本さんがいた。
「お〜、井上くんよく会うね。」
「こんにちは!何してるんですか?」
「いや、今日はカフェでゆっくりでもしようかなと思っていたんだが、どうだ、一緒に来るか?」
もともと行くつもりだったし、竹本さんには聞きたいことがたくさんある。
迷うことなく返事をした。
竹本さんはよくカフェに来ているのか、席を指定してもらっていた。
「いつもここに来るんですか?」
「そうだよ、この席が一番落ち着くんだ。窓から景色も眺められるしね。」
こうして改めて見てみると、竹本さんって何かオーラみたいなものを放っている気がする。
何か言わないと圧されそうな気がしたので、質問を考える。
「あの〜、ちょっと聞きたいことがあるんですけど、、、」
「うん、英語か?」
「いや、今回は英語じゃなくて、教える関係のことなんです。」
「あ〜、そっちか、井上くんは塾講師のバイトをしているんだったよね。」
「はい、そうなんですけど、何か生徒に伝わりきれていない気がするんです。」
「井上くんが言っていることが、ってこと?」
「そうなんです。」
実は前から気になっていた。塾で一生懸命教えても、生徒の顔がイマイチピンと来てなくて授業の後、残念な気持ちになる。
でもどうしたらいいのかわからなくて悩んでいた。
「竹本さんって教えるのめちゃめちゃ上手いじゃないですか。どうやってそれを身につけたきたのかが知りたくて、、、」
竹本さんは一瞬窓の外を見た。何かを思い出しているようだった。
「それは簡単に習得できるものではないし、一概にこれがいい、というわけではないけれど、
いい方法があるよ。」
竹本さんはニッコリと笑う。
「何ですか??」
「それはね、、、、、、、
小学生と話をすることだよ。」
「小学生、ですか?」
「そう。僕に教える技術を教えてくれたのは他でもない小学生なんだ。もちろん、それがすべてとは言わないけれど、
彼らにはとてもお世話になった。なんでだと思う?」
小学生が竹本さんの先生。予想外だったけど、言われてみたらわかる気もする。
「小学生だとちゃんと噛み砕いて説明しないといけないからですか?」
「そうだね、それもある。しかも単に噛み砕いたらいいわけじゃない。あいつらは興味がないとすぐに話を聞かなくなるから
なんとか食いつかせようとこっちが考えるんだ。彼らの興味のあるゲームと結びつけたり、例えを使ったり、それがけっこう大変なんだよね。」
なるほど、いつも以上に努力が必要ってことか。確かに練習になるのかもしれない。
「それからね、あいつら鋭いんだよ。」
「鋭い??」
「うん。すぐに質問が飛んで来るんだ。それはなんで?なんでそんなことになるんだ、って。
小学生より上の子たちはあまり質問しないんだけれど、小学生は一々お構いなしに質問してくるから
大変なんだよ。自分がもし曖昧に知っていたことをあいつらに伝えてしまったら、
奴らの鋭い質問でノックアウトだな笑」
「なるほど、腑に落としていないかどうかがすぐにバレるってことですね。」
「そうそう、そういうこと。」
そうか、噛み砕いて言う以外にも色々と教える技術を鍛えてくれるのが小学生、、、
「でも、なかなか小学生に会えないですよね〜」
せっかくいいものを聞けたのに小学生と会う機会が全くない。普通に考えて大学生が小学生と接点を持つことは少ないだろう。
「そうだね、じゃあ、今から一緒に地域の少年野球のところに行かないか?
井上くん、野球をしているようだし、コーチとして参加したらどうかな。」
「えっ、いいんですか??」
「もちろん!僕はそこで監督をしていたからね。」
「えっ、知らなかった、、、笑」
竹本さん、少年野球の監督もしてたのか、この人一体何をしてきてるんだ、今まで。
「じゃあ、思い立ったが吉。行くぞ!」
そういうと、竹本さんはすぐに店を出て行った。
置いて行かれないように、僕も慌てて店を後にした。
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