(記事はストーリー展開されていますが、途中から読んでも大丈夫なようにしてあります。)
《あらすじ》
大学2回生の井上は、何もない日常を過ごしている時にある一人の男に出会う。
男の名は竹本智史。
毎日話していくたびに彼の話に魅了されていく井上はある日、竹本が行っているプログラム(英語力と教える技術のスキルを身につける)に入らないかと誘われる。
英語と人を育てることに関心があった井上はその誘いを受け、新たな一歩を踏み出すことになった。
「今日は時制の話をしていこう。」
セミナールーム全体に竹本さんの声が響き渡る。
今回が始めてなのは僕だけかと思っていたが、周りを見る感じ、僕一人ではないようだ。
部屋は30人くらいが入れる大きさで、今いるのは10人ほどか。竹本さんの考えで一回のプログラムは常に少数で行うようにしているらしい。
「はっきり言って英語に現在形なんて存在しない。」
部屋全体がどよめいた。おいおい、また大胆なことを言いやがる。
「それはどういう意味ですか?」
隣の人が質問をする。そりゃ、そんなことを言われたら聞きたくなるだろう。
「現在形、というと、あたかも現在のことしか捉えていないが、正しくは、過去⇨現在⇨未来、全てを含んでいるのが現在形なんだ。」
過去⇨現在⇨未来、、、?現在形という言い方が悪いってことか。
「例えば、I am a teacher と言う時、今しか先生なわけではないだろう。これまでも先生だったし、これからもおそらく先生。つまり、過去から未来まで繋がっているんだ。だから俺は現在形のことを包括形と呼んでいる。」
「たしかに、言われてみればそうかも。」
と後ろの男性がうなづく。でも考えてみれば確かに今だけのことなら現在進行形を使えばいい。
「I have a dog だってそう。今の瞬間だけ飼っているわけではない。これまでもこれからも飼っていることになる。
そしてここからがミソ。このニュアンスがわかってこそ、現在進行形が使いこなすことができるんだ。
例えば、I am leaving の意味は、井上君、何かな?」
「去っているところです、ですか?」
「んー、それでだいたいは合っている。進行形で大事なのは経過中だということ。そしてそれは途中で中断可能でないといけない。」
「中断ができる?」
「うん。I am leaving なら(去ろうとしている途中です⇨)もうすぐ出発です。の意味になる。この場合、去ろうとするのは中断できるよね?」
「はい、やめて違うことができます。」
「うん。この途中経過が、時には未来形に応用される。それはわかるように、すでに『そんな未来に向かっているところ』ってニュアンスがあるからね。」
なるほど、この概念は be going to が未来形になるのと同じ理屈だな。。と考えていたとき、後ろから声が聞こえた。
「じゃあ、どうして know とか love とか have とかは進行形にできないんですか?」
それは気になっていた。いや、まてよ、もしかしてこれもさっきと同じ理屈じゃ、、、
「それはさっきの話を展開したらわかる。進行形は、中断⇨再開⇨中断、みたいな感じに、例えば1秒ごとに止めたり再開したりできるもののときに使うんだ。
ここで大事なのは、何が進行形を使わない動詞なのか、を覚えるのではなく、どういったニュアンスになるのか、を考えること。 はっきり言って、know, love, belong, とかは進行形を使わないなんて丸暗記しても何も英語力は上がらない。
常に意識すべきことは、どういったニュアンスになるのか、どんなイメージで話者は話しているのか、という部分。」
どんなイメージでいるのか、か。前に竹本さんから言われたことだ。
「もし、 I am having a dog だとしたら、犬を飼おうとしている途中です、というニュアンスになる。日本語としてはおかしいよね?
でも、I am having a good time なら進行形はおっけー。
なぜなら have a good time は『楽しく過ごす』という動作を表すから、中断可能だし、再開も可能。
とにかく、進行形は中断可能、再開可能、そして今起こっている、という躍動感、これがキーポイントだ!」
今まで進行形をここまで考えたことなかった。進行形にはそれなりの深い次元があるのか。単に丸暗記していてもダメ。今までの自分がまた恥ずかしくなる。
「もうちょっとだけ例をあげよう。 I am seeing you は知ってるかな?」
「付き合っている、です!」
女の子が答える。
「そう。これも『見る』だとおかしいことになるね。見る途中です、って日本語はおかしいよね。だってseeはlookと違って受け身の『見える』の意味だから、自分で主体的に見ることはない。それはそもそも自分の意思で中断⇨再開はできないよ。」
そうか、だから I am looking at you は言えても、I am seeing you は違う意味に変わっちゃうのか。一つ謎が解けた。
「じゃあ、マクドで Im lovin’ it ってありますけど、あれはどうなんですか?」
それはおれも聞きたかった。あれは進行形にしてはならない love を進行形にしている。あれの意味は、、、
「お、いい質問だね。それもさっきの説明で片づく。進行形は躍動感、中断⇨再開、のニュアンスだったから、
あれの話者はマクドの食べ物を食べて、口に運ばれたその一瞬一瞬、そしてそれによって、普通⇨好きへとどんどん変わっていくリアル感を出しているんだ。
love になりつつある、その具体的なニュアンスがキャッチコピーとして使われている。」
「そうか、そういうことだったのか!!」
前の人が大声を上げる。なんだかすんごいテンションが高い。今までよっぽどモヤモヤしていたのだろう。
「最後に、進行形の上等テクニックを教えよう。」
上等テクニック? まだそんなものがあるのか。一体どれだけ知っているんだ、この人は。
「進行形の、躍動感(リアル感)、中断⇨再開、のニュアンスを駆使すれば、
例えば、いつも彼は優しい、なのに今日だけは意地悪、そんなときどういった英語になるだろうか?
わかった。もうわかったぞ。これはもう一つしかない。
「I am being mean です。」
ドヤ顔で答える。これには自信があった。
「そう、正解! He is mean だと彼は(いつも)意地悪、というニュアンスになる。
でも進行形にすることで、いつもは違うのに、今回だけは、といったニュアンスになるんだ。
また、意地悪だ、という性質ではなく、意地悪な振る舞いをしている、というふうにリアル感が出ている。
それを表すのにわざわざ2文も3文もいらない。
進行形をモノにしているからこそ、1文で言いたいことを表せる。」
体に電気が走った。これが本当の英語。単に日本語を英語に訳せればいいってもんじゃない。
「以上で今日のセミナーは終わりにします。質問がある人はこのあと来てくださいね。」
そう言って竹本さんは部屋から出て行った。
その後すぐに疲れがどっと出てくる。頭がパンクしそうだ。
まだまだ1日目。もっと頑張らないといけない。
《まとめ》
現在形=包括形
進行形=躍動感、中断⇨再開⇨中断、、、と繰り返すことができるもの。
大事なのはどれが進行形にならないのか、ではなく、どういったニュアンスになるのか。
下克上英語の原点
⇨丸暗記の勉強よおさらば〜ネイティブに近づく下克上英語〜
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