(記事はストーリー展開されていますが、途中から読んでも大丈夫なようにしてあります。)
《あらすじ》
大学2回生の井上は、何もない日常を過ごしている時にある一人の男に出会う。
男の名は竹本智史。
毎日話していくたびに彼の話に魅了されていく井上はある日、竹本が行っているプログラム(英語力と教える技術のスキルを身につける)に入らないかと誘われる。
英語と人を育てることに関心があった井上はその誘いを受け、新たな一歩を踏み出すことになった。
これまで未来形、現在形と進行形を勉強してきた。
今日はいよいよ過去形。またあっと驚くようなものがあるのだろうか、、、
「では、今日もやっていきましょう!」
相変わらず、竹本さんは元気がいい。あの人から発するエネルギーみたいなものが肌で感じられる。さすがだ。
「今回のテーマは過去形だ。過去形は確かに存在する。今までみたいに、未来形はない、とか現在形はないとか言わない。
しかし、過去形も言い方を変えることができる。」
未来形はないことはわかった。そして、現在形は包括形だ、とも前回習った。じゃあ過去形は一体、、、
「では、井上くん。過去形を使うときはどんなときだろうか?」
急に質問がきたから焦る。
「えーっと、過去のことです。」
「それだけかい?」
必死に考える。過去のこと以外で過去形を使うときなんてあるのか、、、?
「丁寧な言い方のときと、仮定法のときです。」
男の人が答える。あの人は前回も積極的に発言していた人だ。
「そうだね、丁寧な言い方と、仮定法のとき。じゃあなんでかわかるかな?」
みんな黙りだす。そんなの考えたこともない。学校の先生にはそういうもんだ、と言われて教えられてきた。
「実はこれにもちゃんとした理由がある。話者のイメージを考えてやるんだ。」
そういって竹本さんはホワイトボードに図を描きはじめた。
「今と過去との関係を見てみると、面白いことがわかる。何かわかるかな?」
みんな図を見て考えている。関係、、、? 何があるだろうか。
「これは日本人にはわかりやすいものだ。もしかしたら他の国の人だと気付きにくいかもしれない。」
あっ、っと女の人が声をあげる。
「遠い感じってことですか?」
「そうだ。今と過去を考えると、過去って今より遠いもの、みたいなイメージがある。
でも、時間の概念がない文化だったなら、この感覚はわからないだろうな。」
「時間の概念がない文化もあるんですか??」
「あるよ。文化によっていろいろな概念が異なってくるんだ。
例えば、アマゾン熱帯雨林にある小さな部族、アモンダワ族は時間の概念がなく、年齢というものもない。」
そんな部族もあったのか。世界って広いな〜と感じた瞬間だった。
「だから、日本人にはまだこの、『遠い』、というイメージはわかりやすい。さてと、ここからだ。」
そういって竹本さんはさっきの図に二つを追加した。
https://www.evernote.com/l/AlNJSa5KQ0ZFq4ZspsnBVjnZGoV6rL0PUKQ
「さっき、過去形を使った表現には、過去のことを表すとき以外にも丁寧な表現、仮定の表現にも使われるといったよね。
それもこの過去形のイメージが反映されている。つまり、距離感だ。」
距離感、、、一気に頭の中を駆け巡る。そして今までにない衝撃を感じた。
「仮定法、例えば、 If I were a bird, I could fly. みたいな文は仮定法の典型パターンだよね。
鳥だったら、、、なんてありえない。つまり現実と仮定の世界に隔たりがある。つまり距離感だ。」
「そうか!!」
今度は前の人が声を上げる。
「丁寧な言い方も、相手と心理的に距離感を感じるから過去形を使うのか!!」
「その通り! Could you tell me the way to the station? みたいな言い方。
これも相手との距離感が感じられるから過去形を使う。過去形の距離感がここにも反映されているんだ。」
電撃だった。この人も僕と同じ感覚に違いない。今までの謎が一本の線で結ばれていたなんて、、、
「過去形=距離形。このイメージを駆使すれば、いちいち過去形を使う場合を丸暗記しなくていい。距離感を感じたら過去形。ただそれだけのこと。」
「もしかして、I would say,,,みたいな控えめな言い方も関係があるんですよね、、?」
別の人が質問をする。確か高校では、仮定法と一緒に習った気がする。このときの訳は『僕だったなら、、、』みたいなものだったはず。
「そうだね。単純に一歩下がっている、つまり距離感があるから would を使う。それだけのこと。
高校で仮定法だとか、このときはこういう風に訳しなさい、とか言っていたかもしれないけど、そんなつまらない英語なんてやめてしまおう。
そもそもネイティブが毎回、今は仮定法で、このときは過去で、今は丁寧で、、みたいに考えているわけないじゃないか。
そんなんじゃ考えているうちに次の話にいってしまうよ。」
確かに言われてみれば、もっともだ。そんなの考えていたら、いくら時間があっても足りない。これもイメージの力、、、。
「じゃあ、今日はここまでにしようかな。」
そういって竹本さんは元気に出て行く。それに対して僕たちはヘトヘトだ。
毎回新しい内容で濃いものを聞かされると、パンクする。本当に大変だ。
「おれら全然英語を知らなかったな。」
隣の人たちが話している。間違いない。今まで英語の「え」の字も知らなかったんだ。
「もっと勉強しないとな。」
誰かが言ったその言葉に、部屋にいる人全員がうなづいた。
《まとめ》
過去形の距離感がさまざまに応用される
過去形=距離形
これが、丁寧な言い方、仮定法に応用されている。
下克上英語の原点
⇨丸暗記の勉強よおさらば〜ネイティブに近づく下克上英語〜
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