(記事はストーリー展開されていますが、途中から読んでも大丈夫なようになってます。)
《あらすじ》
大学2回生の井上は、何もない日常を過ごしている時にある一人の男に出会う。
男の名は竹本智史。
毎日話していくたびに彼の話に魅了されていく井上はある日、竹本が行っているプログラム(英語力と教える技術のスキルを身につける)に入らないかと誘われる。
英語と人を育てることに関心があった井上はその誘いを受け、新たな一歩を踏み出すことになった。
セミナールームに入ると、部屋全体がやる気に満ち溢れていた。
今までの授業でみんな自分たちがどれだけ勉強しないといけないのか、認識できたのだ。
「今日は文法その0の話をしようか。」
いつも通り元気のいい声だ。竹本さんはいつだってエネルギッシュ。
「本当は一番最初にしないといけない話なんだけど、
最初に話さないといけないことがありすぎて言い切れないから、ちょっとずつ小出しにしていこうと思う。」
文法その0? もっと根本的な話なんだろうか。
「今回の話は、日本語を日本語たらしめるものと、英語を英語たらしめる言葉の違いだ。」
まわりのみんなはポカ〜ンとしている。それも仕方ないだろう。俺もはっきりいってわからない笑
「例えば、『私は彼にプレゼントを渡します。』という日本語を考える。これを変形することはできるだろうか?」
「できます。『私はプレゼントを彼に渡します。』みたいな感じですよね。」
「そうだね。もっというと『彼に私はプレゼントを渡します。』も可能だ。
じゃあ何がこんな形を許しているんだろうか?」
一瞬の間が空いてから一人が答える。
「助詞、ですか?」
「そうだ! 助詞が順番を左右できる。助詞の力で日本語は主語などの語の順番を変えることができるんだ。
でも英語はどうだろうか? 順番を簡単に変更できるかな??」
英語はどうだったっけ。 さっきの文なら
I will give him a present か
I will give a present to him しかない。
てことは、英語は順番を制限される、、、
「ある程度はできますが、制限されます。」
「そうだね。それが今回のポイントだ。英語には助詞がない。その代わり、配置が全てを決まる。」
「配置がすべてを、、、?」
「英語の基本的な並びは、
S V
S V C
S V O
S V O O
S V O C
この並びだ。おそらくこのくらいは周知のことだろう。しかしそれだけではない。」
そういって竹本さんは英文を描き始めた。
「例えば、
I use a computer.
この配置。目的語を取る動詞を考えたときに、動詞の後に目的語がくる。当たり前の話だ。
でも、これが示すのはそれだけではなく、動詞のあとのものを強く影響を及ばす意味も入っている。」
強く影響を及ぼす? どういうことだ?
「動詞のあとには影響を及ぼされるものしかこないんだってこと。
じゃあ、こんな質問をしよう。
①I looked at her.
②I looked her in the eye.
この二つはどう違うんだろうか?
もう一つ、
③It took me 2 minutes to get there.
④It cost me a lot of money.
の文はなぜ cost のあとに先に me が来るんだろうか?」
それは昔から疑問だった。なんで it cost 500 yen みたいな言い方にならないのかって。
でも結局はこれってこういう言い方なんだよね、としか教えられていない。
いや、まてよ。これはさっき竹本さんが言ってたことを理解すればわかるんじゃ、、、
「ん〜、、、」
と一人の男の人がうなる。
「①は単に見ただけで、②は影響を与えたってことですよね?」
「そうだよ。訳をするなら
①私は彼女を見た。
②私は彼女をじっと見つめた。
となる。これを聞いて感じないかい?②には女の人に対して影響を及ぼしていることを。」
そうか! 単に見つめるだけではなくてじっと見つめる。視線を感じられずにはいられない。だから look の後に me が来るんだ。
じゃあ③や④も、、、
「じっと見つめるから影響を感じさせる。なら③や④だって同じ。
時間がかかったり、お金がかかったりして影響を受けるのは自分。
だから動詞のあとに me が来る。」
奥が深い。これほどまでに英語は深いのか。これが英語の呼吸。しかし竹本さんはここで終わらなかった。
「さらにこれを発展させよう。例えば、スポーツをするときに
play, do, それからそれ自体が動詞になるやつがある。
❶I play soccer[baseball, basketball, tennis,,,]
❷I do[practice] karate[judo, yoga, taekwondo]
❸I ski[skate, snowboard, bowl, fence]
❶は他動詞だが、わかる通り、影響をぐいぐいと及ぼしていることがわかるだろう。ボールを蹴ったり、打ったり、そして相手との勝負だから
他人に対しても影響を与える。インパクトがあるそのイメージから他動詞で使われているんだ。」
とここまできて誰かが質問をした。
「でも、ボウリングとか、フェンシングとかって相手に影響を与えませんか??」
それもそうだ。危うく竹本さんを信じきるところだった。ボウリングなんかボールを思いっきり転がすし、フェンシングだって相手を攻撃する。
そう思って見ると、竹本さんはにやりと笑っていた。
「そうだね。確かにそうだ。しかし、それはボウリングやフェンシングを誤解している。
ボウリングは元の意味が、玉で棒状のものを転がす、だ。またフェンシングも、中世ヨーロッパの騎士たちが生んだ、剣術、のことなんだ。
これらは本来自己完結しているもの。スキーだってスノーボードだって自己完結している。
だから自動詞で扱われ、目的語は必要としない。だから間違っても I play snowboard とは言えない。
そして、動詞になるまでもないものが❷のバージョン。」
自己完結。そうか、そういうことか。
剣術も、転がす行為もそもそも自分で始まり自分で終わる。そこに影響がどうのこうのとかはない。
「ここまでで質問はありますか?」
竹本さんは僕たちにたたみかける。
新しい情報を頭に入れられてパンパンになる。でもここで質問をしないと。
実はさっきから気になっていたことがあった。
「あの〜。英語って配置の言葉って話をしてましたけど、それで
⑴I gave her a present.
⑵I gave a present to him.
って⑵は gave のあとが a present になってますけど、これってどうなんですか?」
よし、なんとか質問できた。さっき影響が加わるのは人だから動詞のあとに人が来た。でもこの場合、先にものが来ている。
「いい質問だね!」
竹本さんはなんだか嬉しそうだ。
「じゃあ、今日はこの質問に答えて最後にしよう。
いままでをまとめると、他動詞は影響を及ぼす。自動詞は自己完結だったね。
じゃあこれを踏まえて⑴と⑵を考える。
⑴は目的語が彼女だ。てことはニュアンス的には彼女に何かしらの影響を与えたことになる。
彼女が泣いたのかもしれない。感動したのかもしれない。あるいは、話者が相手に気持ちを伝えたい、
そんな感情があったのかもしれない。とにかくインパクトを与えた(与えたい)先は彼女なんだ。」
じゃあ、といって竹本さんは話を続ける。
「⑵の方は目的語が a present だ。つまり影響が及ぼされているのはプレゼント。
プレゼントは彼女に渡って行った、というニュアンスに近い。
どちらかというと、to のイメージである、到達点が意識されている。」
ペンを動かしまくる。くそ、情報がありすぎて、手がついていかない。
「わかりやすいように、
①I taught him Japanese
②I taught Japanese to him
の場合だと、①は彼に日本語を教えて、彼に習得させた感がすんごい出ている。
一方、②は教えたんだけど、それを彼はモノにしたかどうかはわからない、というニュアンスだ。
大事なのは何度も言っているが、何が正しいのか、ではなく、どういったニュアンスで伝わるか、なんだ。
中学校で①と②の文の書き換えをさせられてきたかもしれないが、そんなものにあまり意味はない。」
セミナーはこれで終わった。
竹本さんが部屋を出てもしばらくみんなは黙っていた。
メモをノートに書き留めるのに必死だっだのだ。
僕も同じように書き留める。何としても、英語を上達させてやる!
《まとめ》
英語は配置の言葉
他動詞は目的語に影響を与える
自動詞は自己完結
下克上英語の原点
⇨丸暗記の勉強よおさらば〜ネイティブに近づく下克上英語〜
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