小説「何者」から学ぶ、教え方、教わり方の極意

本

説「何者」を読んだことがあるでしょうか?

この本は朝井リョウさんが書いた、直木賞受賞作です。

簡単に内容を説明しておくと、場面は就活。
そこに登場する、キャラクターたちの心のありようが浮き彫りにされています。

この本を読んだ人は

「人間不信になりそうだった」
「情報発信ができなくなった」

などなど、小説の中での心情があまりにも明確で本質を突いていて、影響力が大きい作品でした。

小説では就活が場面設定となっていますが、それに限らず、様々な場面でも起こりうる(応用できる)ものだと思います。

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〜目次〜

1、小説のワンシーン
2、ワンシーンから学ぶ教え方
3、ワンシーンから学ぶ教わり方

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目次

1、小説のワンシーン

さて、今回はその中のワンシーンを考えていきます。

この場面で出てくるのは4人。

主人公(拓人)とサワ先輩、ギンジと隆良。
その場面では、拓人がサワ先輩に、ギンジと隆良は似ていると話していました。

それに対して反対するサワ先輩。
そこでのサワ先輩のセリフと状況をそのまま抜き取ってみます。

(ちょっとだけ長いです。読むのは黄色いところだけでも構いませんよ。)

「全然違うよ、あのふたり」

サワ先輩は、喫煙所で煙草を一本も吸わなかった。

「いくら使っている言葉が同じでも、いくらお前が気に食わないって思うところが重なったとしても、ふたりは全く別の人間なんだよ」

サワ先輩が煙草を一本も吸わずに喫煙所を出たのは、図書館までの道のりを知らない振りをしてまで、俺に言いたいことがあったからだ。

「お前、こんなことも言ってたよな」

返事をすることができないでいると、サワ先輩の声が少し、小さくなった。

「メールやツイッターやフェイスブックが流行って、みんな、短い言葉で自己紹介をしたり、人と会話をするようになったって。だからこそ、その中でどんな言葉が選ばれているかが大切な気がするって」

サワ先輩は、ツイッターもフェイスブックも利用していない。

「俺、それは違うと思うんだ」

サワ先輩は用があるならメールじゃなくて電話して、と、いつも俺に言ってくる。

「だって、短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ

サワ先輩は、この現実の中にしかいない。

「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表しているんだと思う」

「たった一四〇字が重なっただけで、ギンジとあいつ(隆良)を一緒に束ねて片付けようとするなよ」

いつのまにか、目の前には、目的の図書館がある。

ほんの少しの言葉の向こう側にいる人間そのものを、想像してあげろよ、もっと

想像。

「俺、お前はもっと、想像力があるやつだと思ってた」

想像力。

俺が、隆良やギンジに足りないと思っていたもの。

じゃあな、と後ろ姿のまま手を振るサワ先輩と俺との間に、少し、風が吹いた。煙草の匂いも何も含んでいない風は、喫煙所で吹いていたそれとも、サワ先輩の家のベランダから吹き込んでくるそれとも、全く別のもののように感じた。

 

2、ワンシーンから学ぶ教え方

背景 

小説の中で言っていたのは、その言葉に至るまでに捨てられた情報がどれほど大事か、というものでした。

それは日常でも言えます。

例えば、学校の先生をイメージしてください。

あなたは生徒に
「なんで勉強するんですか、意味ないんじゃないんですか?」

と聞かれます。

あなたならどう答えますか?

(実は、この問題はこの前の講師大会で出された質問でもありました。)

これに対して、多くの先生はいうわけです。

「勉強していく中で、これから生きていくうちに必要な土台が作れるんだよ。」

とか

「国語一つにしても、ちゃんと意味があるんだよ。」

それは間違ってはいないでしょう。

しかし、その言葉にどれほどの生徒がピンとくるでしょうか?

「また、親と同じことを言っているよ。」
「はいはい、何度も聞きました。」
「ふ〜ん、そっか。」

と思うだけで、それに対して感銘を受けることがなかったり、心を動かすことはないんじゃないでしょうか。

何が言いたいのか、というと

その背景をちゃんと説明してあげる
自分がその経験をしている
自分の腑に落としておく

これが大事なんじゃないかなと思います。
当たり前かもしれません。

自分で経験をしている、腑に落とす、これは基本中の基本だと思いますが、それよりも先にあるのが、背景を説明するということ。

自分がどうしてそんな考えに至ったのか、どうしてその考えが出てきたのか、
そこには自分のストーリーがあるかもしれないし、自分だけの特別な経験があるのかもしれない。

人はそういったものに惹かれます。
単なるシンプルな情報だけではなくて、その言葉を伝えるために捨ててきた情報たちも前に出してあげる。

一見遠回りに見えても、それが一番の近道だったりします。

歴史とかもそうじゃないですか。
単に事実を淡々と教えるより、その背後にある欲、悪、人間関係などが見えると途端に楽しくなります。

 

3、ワンシーンから学ぶ教わり方

闇の向こう側

ある人が誰かと同じことを言っていたとしましょう。
それを単に「また同じことを言っているよ」と思うのか、「何かあるんじゃないか」と思うのか。

それが学ぶ人からすると大事になります。
その背景を知ろうとする姿勢が、単なる言葉を何倍もの価値に高めてくれます

そぎ落とされた情報が自分にとって大事なことなんだと認識すること。
なにかあるんじゃないか、その背景にはどんなものがあるのか?と問いかける力が学ぶ時の姿勢のあり方だと思います。

背景を質問していくと、その人が本当にソウルから言っているのか、口から言っているだけなのかはわかります。

さきほどの例を使うと、
「勉強すると、生涯役に立つスキルが身につくんだ、だから勉強しよう。」

という言葉でも、先生が生徒をコントロールしたいがために言っているだけだったとしたら、生徒の心に届きません。
その言葉は単なるコントロールの道具で終わってしまいます。

結局、それがなんとなくわかるから生徒は嫌になっちゃうんでしょうね。

ここで問題なのは、何もせずにその言葉の背景を感じるには自分がある程度レベルが高くないといけない、ということです。

自分のレベルが低いと、相手の背景にあるものは見れないですよね。そんな簡単にわかるわけないじゃないですか笑
だから自分を成長させるか、相手にアタックする(質問する、相手のことを知ろうとする)ことが学ぶ立場の人には必要。

もちろん、僕も含めて。
教える人なら、その背景を噛み砕いて話す、という技術も必要になってくるとは思います。

(あえて言わない、ということも一つの手だと思います。)

はい、ということで
「サワ先輩」は教える側も、教えられる側にも必要な大切なことを教えてくれました。

それにしても、かっこいいんですよね、サワ先輩。
僕は「何者」の中では一番好きですね、登場シーン少ないですけど笑

最後は変な感想になっちゃいましたが、興味がある人はぜひ読んでみてください。
心えぐられますよ〜

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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子育てに悩む親、後輩、部下を持つ会社員、塾の講師、、、 あらゆる教育者のためのブログです 体の内から爆発を!