「ふう〜、夏期講習か。」
またバイト三昧の日々がはじまる。
僕は大学二回生で、ある教育大学に通っている。教師志望だから個別塾の講師のアルバイトを始めた。もうこのバイトも2年目か。
もうこの生活には慣れてきて、教える技術も向上しているのがわかる。夏か〜とかいいながら結局バイトを楽しんでいる自分がいたりして笑
ただ、そんな中どうしても大変なことがある。それはある生徒を授業で持つときだ。
名前は神谷。口が悪く、先生の言ったこともきかない、とんだ問題児だそうだ。他の先生はお手上げのようでとうとうその生徒がぼくのところに回ってきた。
ぼくはすこし違った捉え方をしていた。そんなに性格の悪い生徒でもないだろうと思っていたのだ。が、実際に授業をすると確かに大変、、、
筆記用具ももってこないし、問題を解こうとしない。他の先生だったら大声をあげてこう言っていただろう。
「何しに来たんよ!」
他の先生はもう諦めかけていた。なんでこんな生徒が塾にきているんだろうか、という話もちらほら聞こえた。でもここでぼくがこの子を放ってしまったら誰からも見放されてしまうではないか。それはまずい。
「神谷くん、勉強しないの?」
「やる気でない。」
「そっか。」
はっきり言ってどうしたらいいのかわからない。何が正しいのか、何が一番いい方法なのか、まったくわからない。
ぼくはある程度心理学は勉強してきたし色んな生徒を見てきた。でもどのテクニックを駆使しても神谷くんは心を開いてくれない。わからない、まったくわからない。
とりあえず話を聞くことにした。ぼくができるのはもうこれくらいしかない。
「神谷くんて何かスポーツとかしてんの?」
「テニス。」
質問に対して全部一言。それでもぼくは神谷くんにいろんな質問を繰り返した。好きな食べ物は?家はどこにあるの?兄弟はいる?
質問をするたびにめんどくさそうだけど全て答えてくれる。相手のことを聞いてばっかりだからぼくは自分の話もした。ぼくの過去をすこし話したりとか、好きな芸能人の話をしたり、、、
そうすると反応のいい話題がわかってきた。神谷くんはゲームが大好きなんだ、それもかなりのもの。
ゲームの話をすると向こうから楽しそうに話をしてくる。結局今日の授業はほとんどおしゃべりをして終わった。
本当は夏期講習の予定は決まっているからその予定通り進めないといけない。でないと塾長にヤイヤイと言われる。でもそれよりも大事なものがあると感じた。なんでかわからない。でもこのままだったら予定通り無理に進めても意味がないなと感じた。
授業後に案の定、塾長にはすこし言われた。授業中にゲームの話をしているのばれたからだ。何をいわれても関係ない。ぼくは神谷くんをどうにかしたい!
たとえ、ほかの人が嫌がっても、ぼくが責任をもってこの生徒を担当する。そう心に決めた。
暑く長い夏が始まった。
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