【この物語はフィクションです】
人は誰しも認められたい、という欲求がある。
それは否定しない。俺は昔からそうだった。
子供の頃は親や先生に認められて、認められたいがために頑張った。
今だってそうだ。友達に認められたい、先輩に認められたい、後輩に認められたい、、、
「お前だって認められたいって気持ちあるやろ?」
「まあ、そうやな〜」
飲み会も終盤が差し掛かると、友人と愚痴の言い合いになるか、日々に溜まっていたものを吐き出す場となる。
「そりゃ誰だってそうやろ〜」
「みんなに認められたら気持ちいいしな〜」
みんな共感しながら話は進んでいく。
「先輩もありますよね??」
と隣に座っている先輩へとバトンを回す。答えをわかっていても聞きたいのだ。
先輩も結局は俺たちと一緒なんだってことをはっきりするために。
「ないよ。」
「またまた〜、そんな嘘をつかなくてもいいですよ〜」
「いや、一切ない。」
先輩の顔は真剣だった。期待していた答えと違ってみんな唖然としている。
「だって、これって人類普遍のものですよ。先輩だって親とか先生から認められた時、嬉しかったでしょ?」
「まあ、確かに小さい時はそうやったな。」
「じゃあ、そうじゃないですか。今も変わりませんよ。自分に嘘はつかないでください。」
この先輩はたまに謎な答えを出してくる時がある。みんなの期待を裏切るようなことを平気で言うからな〜。
「いや、確かに昔はあったけど、今は全くない。承認欲求を必要としているのは、自分のエネルギーが足りないからや。」
先輩の顔を見ると嘘をついているようには見えなかった。
本気の本気で言っているのか、この人は。
「どういうことですか、、、?」
友達の1人が尋ねる。
みんな興味深そうに視線を移す。
「小さい時は必要や。そもそもこの世にあるもので意味のないものなんてないのだから、すべて必要な要素ではある。
でも、それはいつか卒業しないといかん。そうでないとエネルギーを他の人から奪っていくことになる。」
まだみんなよく分からない、という顔をしている。俺だって意味がわからん。
「例えば、エネルギーがない奴は、リーダーになリたがる。
それはリーダーになることでみんなからすごい、というエネルギーを奪いたいからや。
他には、
人を馬鹿にする、
やたらと世話を焼きたがる、
恋愛依存症になる、
なんでもかんでも自分でしようとする、
したくもないボランティア活動をする、
教えたがる、
SNSで必要のない投稿をして、みんなから返事やお気に入りを得ようとする、
プレゼンで自分の知識をひけらかす、
親しくない先輩に敢えてタメ口で話す、、
いくらでもある。」
「じゃあ、リーダーになるなってことですか、、、?」
「いや、そうとは言ってへん。大事なのはその動機、意図。なんの目的でそれをしようとしているのか、
エネルギーを得たいがために世話を焼くのか
本当に世のためだと思ってボランティア活動をするのか
教えることで力を感じたい(エネルギーを奪いたい)と思っているからするのか
それとも、その人の成長を願って教えようとしているのか
すべてはその目的。」
ぼやっとしていたものが見えてきた気がする。
エネルギーがあれば承認欲求もいらないのか、、、
「先輩はエネルギーが満たされているから承認欲求はいらないってことですか。」
「まあ、そうやな。」
「じゃあ、どうやったらエネルギーをとれるんですか??」
それが一番聞きたいところ。こんな話を聞いてそれを聞かなかったら意味がない。
「それはやな、、、」
「すみません、お客様、飲み放題のお時間が終わりましたのでご退出お願いします。」
「じゃあ、出るか。」
そう言ってみんな店を出る。タイミングが悪すぎた。ここからが話の肝だというのに。
「お疲れ〜」
と言って先輩が帰ろうとする。いやいや、そこで終わられてはこまる。
「待ってくださいよ、話まだ終わってません!」
「いや、もう時間だし、電車も少ないし、まあ自分で考えな。」
そう言ってあっさりと行ってしまった。
どうやったらエネルギーをあげれるんだ、、、
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