【物語編】正攻法という不正攻法〜相手(自分)のやる気を引き出す技術〜

【この物語はフィクションです】

今日も井上くんはやってきた。

最近の彼の顔は清々しい。見ていて好感が持てる。今日は何を聞きにきたのだろう。

「いっつもいるんですね。」

「そらな、ここが俺のお気に入りの場所だからな。」

「なんか暇そうですね。いつも何してるんですか?」

「そりゃ、いろいろしているよ。まあトップシークレットだけど。」

いつ来るかとは思ったが、やっと俺のことを聞いてきたか。まあ、まだ俺の素性を晒すほどでもない。

「どうせ言ってくれないと思ってました。」

「ははは、でもそんなことを聞きに来たんじゃないだろ?」

「あ、ばれちゃいました?笑 実は生徒のことで、、、」

「うん。何か困ったことでも?」

「困ったことというか、僕のいうことをあまり聞いてくれないんですよ。l

別に信頼関係がないってわけじゃないんですけど、これやったら成績あがるって

本人もわかっているはずなのにしてくれなくて。」

「例えば、どんなこと?」

「英語を教えている時とか、よく単語が大事だっていうんですけど、

全然やってこないし、本当に伝わっていくのかなって思うんです。

音読も大事だからしろって教えるんですけど、なかなか、、、」

「ふ〜ん。つまり井上くんにとって一番いい方法だとしているやり方を

生徒がしてくれない、しかもそれは絶対必要なことなのに、ってことだね?」

「はい。そんな感じです。」

正攻法ってね、かならずしも正しいとは限らないんだよ。」

「え?正しいから正攻法なんじゃないですか!それはおかしいじゃないですか。」

「まあまあ、落ち着いて笑 でもよく考えてみてほしい。一番大事なのはなんなのかを。

生徒が正しい方法で勉強することがゴールじゃないよね?」

「まあ、そうですけど。」

「生徒の成績が上がるのが一番いい。それが大事なこと。そしてね、その考えに立った時に

正攻法は必ずしも必要ないことに気がつくはずだよ。」

「まだ言っていることがわからないです。」

「じゃあ、こんな言葉を聞いたことがあるかな。ウィリアム・ウォードの言葉だ。」

平凡な教師は言って聞かせる。
よい教師は説明する。
優秀な教師はやってみせる。
しかし最高の教師 は子どもの心に火をつける。

「この言葉を君もおそらく聞いたことがあるだろう。

しかしそれを理解して実践している人は少ない。」

「確かに聞いたことはあります。でもどうやって火をつけたらいいか、、、」

「キーワードは、必要性、世界観、楽しさ、三つだよ。」

「必要性、世界観、楽しさ?」

「そう。」

見た感じでは井上くんはまだピンときていないようだ。

「必要性とは、それをする必要がなんなのか。あるいは

それをすることは何に繋がるのか、を示すことだ。例えば、

国語や数学をすることでどのようなスキルが身につくのか、

勉強というものを通してどう成長できるのか。そういった

必要性を示すことでやっていることに意味が出てくる。

生徒の多くはそれがわかっていないから、無駄だといって

勉強しなくなる。」

「まあ確かにそうですね。それはわかります。でもそれがわかっていても

勉強しない人たちが出てきますよ!」

「そうだね。だから次の段階に入る。それが世界観。」

「世界観?」

「それを通じて未来にどんなことが待ち受けているのか、ということを意識させることだ。

例えば、勉強した先に楽しい大学生活が待っている、と考えたら

必然的にやる気は上がるだろう。またいろんなスキルを身につけた後の

自分を想像させてやることで、それが実感としてやる気につながる。

出来上がった世界にいることを意識させることで心に火をつけるんだ。」

「ルフィみたいな感じか、海賊王になる、みたいな。」

「いい例えだね。あれはルフィが海賊王になる、っていう世界観を提示したから

それに共鳴して仲間が集まった。そしてその世界をめざしてどんどん前を進んでいるんだ。」

「なんか、わかる気がします。で最後は、楽しさ、ですか。」

「そうだね。単純な話、今やっていることをゲームに変えていけばいいんだよ。」

「ゲームに変える、ですか?」

「例えば、声かけ一つにしても、問題を、敵、といったり、難しい問題を、ボス、といったり、

比喩を使うだけで印象はガラッと変わる。勉強=堅苦しいもの、っていうイメージがあるから

それを破るだけで全然違うものになるんだ。でも他にももっと単純にできるものがある。」

「なんですか?」

「単語テストとかもゲームにしてしまえばいいんだよ。例えば、僕が塾講師の時にしていたのは

その子はアルファベットをしたてだったから、30秒間で何個かけるか、を

毎回確認して、書けた数だけポイントをあげるようにした。

単純にアルファベットのテストをするよりも、タイマーを使って、

ポイント制を導入するだけで本人は喜んでやっていたよ。」

「ん〜、よくそんなん思いつきますね。」

「それは日頃考えているかいないか、の違いなだけだよ。

先生はクリエーターでもあるからね。そういった工夫が生徒のやる気を引き出す。

意識することはどうしたら楽しくなるかなって考えること。

たったそれだけなんだよ。」

「なんか、僕教えることだけに囚われて、そういった考えを持っていなかったです。

僕自身が苦しくて踏ん張って勉強していたのでそんなもんなのかなと。」

「勉強はもっと楽しいもののはずなんだよ。でもいつのまにか、しなくちゃいけないもの、って義務になるからつまらなくなるんだよね。」

「必要、義務、楽しさ、ですね。なんか見えてきた気がします。

もっと生徒に楽しんでもらえるように考えないと!」

「頑張って! 応援しているよ。」

ふう〜。井上くんを見ていると昔の自分を思い出す。懐かしい記憶が蘇ってくる。
大学生の頃は何も知らなくて生徒に迷惑をかけてきた。だからいまは少しでもいい指導者を育てたい。

俺はどれだけ彼に火をつけることができるんだろうか。これもまた一つの試練なのかもしれない。
いや、もしかしたら一番火がついているのは俺自身なのかもしれないな。

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