学歴コンプレックスという言葉が存在します。
あの大学に入っていたら、
もっと賢いところに行っていたら、
東大に入っていたら
早稲田に受かっていたら、、、
いろんな思いが入り混じっていることでしょう。
今回はストーリー形式で話していきます。
【この物語はフィクションです】
俺は国公立を受けていた。
私立も早稲田を受けて、せめてここに行きたい、という強い思いがあった。
しかし、気付いたら全て落ちて、今は滑り止めで受かった大学に行っている。
悔しいし、こんな大学は嫌だとずっと思っている。
そんなこんなでもう今年は終わろうとしていた。
あちこちで早稲田、という言葉を目にすると見逃せない。
どうしても早稲田への憧れが強く、今でも受験期に戻ってやり直したい。
今いるこんな大学で何ができるんだろうか。
どうやって楽しめるんだ。
できるわけない、周りもどうせ賢くないやつばっかだ。
こんなところにいてもいいものは望めない。
そんなことを考えながら今日も大学を後にする。
信号で待っていた時、見覚えのある先輩を見つけた。
確か、磯貝さんだったっけ?
彼は阪大を受けて落ちた人だ。
この前話した頃がある。
もしかしたらこの俺の気持ちをわかってくれるかもしれない、
そう思って話しかけてみた。
「磯貝さん、こんにちは。」
「お、ワタルやん、久しぶりやな。」
そうやら相手は名前まで覚えてくれていたようだ。
少し安心する。
「磯貝さんって、阪大を受けてたんですよね?」
「そうやで、ま、落ちたけどな。笑」
なんとも陽気に話す。
阪大を落ちたことに関してなにも思っていないんだろうか。
「僕、この大学が嫌なんです、、、磯貝さんも阪大落ちてこんなこと思いませんでした?」
「ああ、最初はへこんだかな。でも切り替えてやってるよ。」
「そうなんですか、、、」
磯貝さんはあまり悩んでいないのだろうか。俺みたいに学歴コンプレックスみたいなものがなかったのか、、、
「毎日、早稲田に受かってたら、って考えるんです。
絶対違う人生が待ってたと思うし、
今よりももっといい大学生活を送れてたと思うんですよ。」
「ふーん、なんで?」
「だって、こんな大学より早稲田の方がいいじゃないですか。
名前だって知られてるし、早稲田ならもっとおもしろいメンバーが
揃っていると思うし、
僕がこの大学にいる限り、将来が安定しないと思うんです。」
「ふーん。」
磯貝さんは冷静に返事をする。
特に共感の素振りも見せない。
一体何を考えているんだろうか。
「人生をやり直せたらな〜」
ふう〜っとため息をつく。
こんなことを何回考えたことか。
「バカちゃうか、お前。」
一瞬磯貝さんが言ったこととは思えずに戸惑う。
でも確かに磯貝さんはこっちを向いていた。
「バカ、って言いました、、?」
「うん、言った。」
磯貝さんの顔が真剣な表情になる。
「そうやってずっと愚痴を言ってたらええやん、一生。」
急に言葉が鋭くなる。
「あれだったら、とか、これだったら、とか
そんなことを考えている時点で永遠に幸せにならない。
ずっとしんどく、コンプレックスに付きまとわれて終わりや。」
「、、、」
「今のお前は逃げてんねん。
早稲田に行ってたらもっとよかったとか、
もっと幸せになってた、とか
逆に言ったら、早稲田に行ってない自分だから
幸せじゃないって聞こえるけどな。
早稲田に行けなかった自分だから腐った大学生になって当然、みたいな。
そんな奴は早稲田に行ったとしても同じことを繰り返す。
こんな環境にいたら
親が金持ちだったら
もっとスポーツができたら
もっと背が高かったら
もっといいところに住んでいたら
そうやって常に自分はできない、ダメなやつだ
という理由を探し続ける。お前は早稲田に行きたいんじゃない。
早稲田に行ってない自分だから、クズなんだ、
って言い訳をしているだけやねん。
頑張れない自分を正当化するために早稲田に落ちたことを
道具に使っているだけや。
そんなやつが早稲田に行ったところでろくなことにならん」
言い返す言葉がない。
「どうせ、周りのやつをバカにしてんちゃうか?
こんな奴らじゃ何もできない、
俺はもっとレベルの高いやつらと一緒にいたいんやって。
でもな、それって周りの奴らのいいところが見つけられへんってことやろ?
人の長所探しは自分の長所探しなんや。
自分にその才能があるからこそ、人の才能がわかる。
お前が周りをバカにして、見下している時点で
お前には才能の1つもない、ってことを自分で公開してるのと同じやで?」
「人の長所探しは自分の長所探し、、、」
「そうや。もっと地に足つけて周りを見渡してみ。
周りのやつのいいところを探してみいや。
絶対ある。だってお前が1つの才能もないわけないんやから。
絶対人には生まれ持った才能があるんや。
もっと周りのいいところをとことん探しまくってみ。
それをずっと続けていけば、自分の才能に気がつく。
それができたらおまえはその才能で
もっといろんなことができる。
早稲田に行かなくても、この大学で
やれることはたくさんある。そうやって
今持っている自分の武器を磨いてみろよ。
そうしたら場所なんか関係なくなる。
言い訳もしなくていい。
もっと自分を生かすことを考えてみろよ。
そんな早稲田に行かないと才能が発揮されないような
そんな奴じゃないやろ?おまえはもっとすごいやつなはずやで。」
本当に何も言えなかった。
磯貝さんの言うこと1つ1つに重みを感じる。
さっきまでの自分が恥ずかしかった。
気づくともう最寄駅まで来ていた。
「すまんな、ちょっと熱くなったけど、
でもおまえは場所に縛られるようなやつじゃないと
信じてる。だからこんだけ言った。
もうちょっと頭冷やして、今、ここでできることは何なのか
それを考えてみ。」
そう言って磯貝さんは違う電車に乗って消えていった、、、、
自分が、今、ここでできること、、、
その言葉がぐるぐると頭を回っていた。
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