【この物語はフィクションです】
夏休みが終わった。
また大学生活を繰り返すのか、、、ちょっとめんどくさい。
夏は本当に楽しかったな。
インターンも行ったし、いろんなセミナーも行けて大満足。
いろんな話も聞けたし、もう一回夏休みが欲しいよ。
でも、来年は4回生だしな、就活もあるしちゃんとしとかないと。
そう思って夏休み明け1日目が始まった。大したことのない授業を受けて、今日からまた退屈な毎日が始まる。
2限が終わって昼食を食べようとしたら、同じサークルの先輩がいた。
「先輩、お久しぶりでーす!」
「おう、久しぶりやなー、夏はどうやったんや?」
アキラ先輩はサークルの中でも1番頼れる先輩だ。いろんな話をしてくれる。
「めっちゃ良かったですよ。いろんな経験してきたし、セミナーも行ったし充実してました。」
「そうか。」
「はい、なんか大学生活がつまんなくて、、、もう一回夏休みを繰り返したいくらいですよ〜」
「ふーん。」
なんだか、先輩の態度がいつもより冷たい。気のせいかな。
「あと、もっと自分を高めようとして本もたくさん読んだんです。もうだいぶ成長できましたよ。」
「んー」
いつもと明らかにおかしかった。いつもならもっと優しく話を聞いてくれるのに。
「どうかしたんですか、、?」
「いや、べつに、、、」
「いや、なんか隠してるんじゃないですか?」
「お前、この夏はどうだったって言った?」
「充実してました、って言いましたよ。いろんなインターンとか行けて、満足した夏だって。」
「だからだよ。」
「えっ?」
先輩の言っていることがわからなかった。そしてこんなに険しい顔をしている先輩も初めて見た。
「じゃあ、インターンで何を学んだ?どうしたいと思った?」
「それは、、、インターンで、僕の興味のあったものがはっきりわかって面白かったですし、
セミナーとかでも話をたくさん聞けて全然知らないことばっかりで、すごいなーって感じたし、、、」
「俺は、何を学んだ?どうしたいと思った?と聞いたんや。だれも感想なんか聞いてない。」
「、、、」
「だからダメなんだ。だから変われない。」
「どういうことですか、、、??」
先輩の顔は真剣そのものだった。でも僕は自分のしたことをわかっていない。
なんで先輩がそんな顔をするのか、なんでそこまで真剣なのか、、、
「セミナーに行ったり、本を読んで自分を高めたりするのは決して悪いことではない。
むしろ素晴らしいことだから、どんどんしていったらいいと思う。」
アキラ先輩は続けて言う。
「でも、それだけ素晴らしいことをしているのに、それが全く意味のないものになるときがある。」
「どんなときですか、、、?」
「満足感を得るためにインターンやセミナーに行っているやつだ。」
満足感のため、、、?さっきの先輩と自分との会話を思い出した。満足感で自分はしていたのか、、、
「勉強することで、勉強した自分がすごい、インターンにいった自分がすごい。
そうやって思っているやつは何も変わらない、変われない。
また、何かを得て、こんなすごいことを知れた、大満足〜、と思っているやつも一緒だ。
なぜなら、せっかく勉強しても、その勉強したエネルギーを満足とか、すごいぞ、と自慢のために
使ってしまい、自分のためにならないからだ。」
自分の行動を思い返してみた。よく考える。そうすると、認めたくはないけれど、先輩のいった自分が浮かんでくる。
「本を読むのも同じ。本を読んで、いいこと知れた良かった、で終わるやつは何も変わらない。
それを人に自慢をするようならば尚更だ。それは自分の勉強のためではなく、
みんなに注目されたい、認められたい、自分の気持ちを満たしたい、という違う欲が先にある。」
先輩の言葉が突き刺さる。痛いどころじゃなかった。
「みんながインターンに行く姿を見て自分が行くのも同じ。
それはインターンで学ぶのが目的ではなくて、みんなが行って自分だけがいかない不安さを
埋めようとしているだけだ。目的が違うんだから何も変わらない。
感情は一時的には満たされても、数日経てば元に戻る。学びとして自分の中に残されていないからな。」
「確かにそうかもしれません、、」
それが僕の言える精一杯の言葉だった。さっきまで元気よく先輩と話していたのが信じられないくらい。
「僕、、、インターンとかを道具として使っていたのかもしれません、、、」
「そうだろうな。」
先輩の顔が急に優しくなる。
「これは、実は前から言いたかったことなんだ。お前が勉強しているのは知っているし、
頑張っているのはわかっている。でも大事なのはなぜそれをしているか、だよ。
せっかく頑張ってるのに、身にならなかったらもったいない、と思って。」
「なんか、すみません、、、ありがとうございます。」
「まあ、言いたいのはそれだけや、でもだからと言ってそんな自分を責める必要はない。
それも全部プロセス。一歩成長できた、と考えたら儲けもん!」
そう言って先輩は消えていった。
普段あまり厳しいことを言わないだけに先輩の一言一言が焼きつく。
もう一度今までの自分を振り返ってみる。
もしかしたら僕は何も学んでこなかったのかもしれない。
そう思ったとき、激しい虚無感に襲われた。
でも先輩の言ったように、これをプロセスだと思うなら、、、
まだまだ未熟な3回の秋学期だった。
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