「知らない」と言う勇気〜教える技術〜

本

<この物語はフィクションです>

今日も暑い中、スーツを着て塾に向かう。
セミがミンミンとうるさい。

なんでこんな暑い日にスーツを着ないといけないのか。

夏期講習が始まり、生徒も先生も必死になっている。
塾に行けば、もう何人もの生徒が自習を始めていた。

おれもそんな時期があったな

そうやって昔を思い出しているうちに時間になった。

私の今日の担当は古典と英語。
今日も生徒は元気良く挨拶をして授業をスタートする。

個別指導のこの塾では先生1人に対して生徒は2人。
生徒によって科目はバラバラになる。

古典か、、、

はっきり言って古典はあまり得意ではない。
私は大学では理系学部に所属しており、古典などは普段はあまり授業をしない。

しかし、やるからには完璧にしてやる!

そうやって意気込んでいた。

「先生!これわからないんですけど、、、」

「うん、どこだ?」

数学や化学の解説にはよっぽど自信があり、塾での生徒からの評判も高い。
古典の解説でつまづいてしまっては面目丸つぶれだ。

「あー、これはね、、、」

といいながら問題を見る。

しかし数学と違って今まであまり触れてこなかった古典は予想以上に難しかった。
ぜんぜんわからない。

とりあえず、間をおくしかない。

「うん、これは多分勘違いしているんじゃないかな、もう一回読んでみてごらん。」

となんとかごまかす。その間に答えと解説を必死にみて理解をする。

あ〜こういうことか

一瞬焦ったがホッとする自分。
これで次に質問がきても大丈夫だ。

「先生、やっぱわからないです。」

「あ〜、これはね、こうなんだよ。つまり、、、、」

「あ〜そういうことなんですね!ありがとうございます!!」

ふぅ〜、なんとか乗り切った。
あぶなかった。いくら受験時代に古典をしていたとしても、難関国公立の古典を現役に解いてたとしても、時間が経てば忘れてしまう。

そんなあたり前のことになんでもっと早く気づかなかったのか。過去の自分が悔やまれる。くそ、授業前にもっと予習をしていればよかった。

そんなこんなで50分が経った。なんとかなるか、そう思っていた頃にまた質問が出てくる。

「先生!このところなんですけど、、、」

「ん、どこや?」

「和歌がどうもわからなくて、、、」

「あ〜確かに和歌はややこしいところはあるね。」

和歌か、、、確かに受験期にだいぶとやらされたが解説するとなると予想以上に難しい。
しかしここはおれのプライドが許さない。何としてでも解説しきってやる!!

そうして自力で解説しようとするが、わかりはするが解説となると話は違う。
でもここで止まってはいけない。なんとかしないと。

必死に頭をフル回転させて問題にとり組む。

「これはさ、さっきの話と関連して、、、」

なんとか解説はしきることができた。しかしそこには安堵と、それ以上に自分に対する情けなさがあった。

授業は終わった。
解説はし終わったのだからいいとしよう、と思いたい。

しかし、おれは忘れられない。問題を解いているときに生徒の顔を。あのときの生徒の不安そうな顔。

こいつ本当にわかっているのかというあの顔。

あの顔が頭から離れず、家に帰ってきてからもずっと忘れられない。解説はしきった。でもそれではいけない。

一瞬でも答えられなかった自分。それによって不安にさせてしまった生徒のおれに対する不信感はそんな簡単には消えない。

なんで、もっと準備しなかったのだろうか。なんで予習をしておかなかったのだろうか。なぜおれはごまかしたのか。

そんな自分が恥ずかしい。あのときに、知らない、わからないものはわからない、と言えばよかった。素直に謝ればよかった。

しかしおれの変なプライドで生徒を不安にさせた。それは間違いない。それは揺るぎのない事実。

信頼関係が大事だというのに、、、おれはまだまだダメらしい。このままじゃいけない。たとえ自分が理系科目が得意であってもそれは生徒にとっては関係のない話。

知らないと言う勇気。
これがおれには足りなかった。

今日の夜はしばらく寝れそうにないようだ。

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